大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和52年(ワ)11962号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

1 前記認定事実に<証拠>によれば、次の事実を認めることができる。

(二) 被告は、ジヤガー、ローバーなどの英国車の日本総代理店で、専ら英国車の輸入販売を目的とする会社であるが、顧客に英国車を販売する際に、顧客が所有していた国産車や米国中古車を下取りして代金の一部に充当すると共に、右車を第三者に販売することもあつたこと。

(二) 原告は、昭和五〇年ころ、被告から、米国中古車であるリンカーンコンチネンタルを代金四〇〇万円で買受けたことがあり、その際に被告の営業担当者が栗田であつたことから、栗田と知り合うようになり、その後、栗田は、数回、原告の家を訪れてセールス活動をしたことがあること。

(三) その後、栗田は、昭和五一年三月、再び原告の家を訪れて、車のセールスをしたところ、原告は、米国中古車のサンダーバードを所有しており、余裕な金もないと言つて断つたところ、栗田は、右サンダーバードを被告の仲介で第三者に売却すれば、被告が下取りするよりも、新車購入の代金を値引きできると言つて、熱心に勧めるので、原告は、被告が英国車の販売を目的とする会社であつたが、前の車の売買のこともあつて栗田の言葉を信用し、同年四月、栗田との間で、被告に、右サンダーバードの売買の仲介をさせることとし、翌日、栗田が右車を引取つたが、原告は、前回の売買とは違つて、被告作成の契約書や車の預り証を受取らなかつたこと。

(四) 栗田は、一・二週間後、原告に対し、右車が金一四〇万円で第三者に売却された旨の電話をし、右代金の一部として、金二〇万円を原告に渡したが、残金の授受がされないうちに、栗田は、原告の留守に、原告宅を訪れ、原告の妻から、車の名義書換に必要な書類を受取つたこと。<中略>

3  右1認定の事実によれば、被告は英国車の販売を主たる営業目的としているが、下取した米国中古車を販売することもあり、その営業社員である栗田が、原告に、英国車を販売する手段と称して、原告の車を第三者に売却する仲介を申出て、原告から右車を引取ることは、その行為の外形上、被告の業務の執行についてなされた行為であると認めることができ、原告が、それまでの栗田との関係から、栗田の右行為が被告の業務の執行であると誤信したことは、原告にある程度の不注意があつたとしても、相当な理由があり、したがつて、栗田の右行為に基づき、原告に生じた損害を被告に負担させることができ、この点において、原告の主張は理由がある。

4  ところで、民法七二二条二項による過失相殺は、被告の主張がなくても、原告に過失があつた事実が、認定できるときは、公平の見地から、右法条を適用して、過失相殺をすることが相当であるところ、本件において、原告は、栗田から契約書や預り証を受取らないで、慢然と栗田の言葉を信じて、車を引渡したこと、被告の仲介手数料の定めがなかつたこと、栗田の行為を被告の事務所に訪れて確かめることができるのに、これをなさなかつたもので、この点に、原告の損害の発生につき、過失があると認められ、右過失を斟酌すると、原告の金一二〇万円の損害のうち、金八〇万円の支払の責任を被告に負担させることが相当であると判断する。

(小松峻)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!